明日忘れてもいいように
胸の奥のそのまた奥に
埃を被ってずいぶんと長い間置き忘れられたピアノ
一番端からひとつひとつ弾いていくと
いくつも鳴らない箇所がある
それは大事にしていたつもりで
いつの間にか薄れて消えた思い出
調律のしかたを知らない僕は
いまさらになって必死に叩くけれど
どれだけそうしても失われた音はもどらずに
間の抜けた曲を奏でることしかできなかった
思い出はいつか消えてしまうものだと
あたりまえのように思っていたけれど
それがこんなにもつらいものだと知っていたなら
僕はけして過去を手放すことなんてしなかった
でもそれは
未来を生きていく僕らにとって
たぶんしかたのないことなのだろう
一年先
十年先
二十年先”今”はどれだけ残っているのかな
いつかは消える運命だから
僕は精一杯
今を生きようと思うんだ
たとえ明日
君を忘れることになったとしても
僕が忘れられてもいいように
僕は精一杯
今を生きようと思うんだ
悔いを残さない生き方というのは
どうしてこんなに難しいのでしょう……
それでも、そうありたいと、
そんな気持ちで書いた詩です。