いつかくる朝


夢をみたんだ
どこともしれない湖の上を
真っ白なボートで君と進む夢

さざ波をすべる風に
君はそっとなびく髪を押さえ
僕に優しく笑いかける

真っ青な空をふと
ひとひらの雪が舞い

そして君は僕の前から姿を消した

目が覚めて
ぼんやりとした視線を
少し陽にやけた壁にむける

そこには君の姿は ない

いつのまにか僕は涙を流していた
夢から覚める前からなのか
それとも覚めた後からなのかはわからなかったけれど

君がいないという現実に
とめどない涙を拭うこともできずに
僕はただ泣いていた

先に起きようとして「寒いよ」という呟きも
カーテンをあけようとして「もうちょっと」という囁きも
二度ともどることはない

そんなことはわかっているつもりなのに

夢から覚めるたびに僕は
涸れはてたと思っていた涙を
やけに広いシーツに染みこませる

いつになれば
僕は起きあがることができるだろう

いつか必ず朝はやってくる
その一言を今は信じ
僕はまた

眠りにつく


醒めやらぬ願いに身を任せても
いつかは戻ってこなければないのが現実というものだから
ならせめて今は心おきなく眠っていたい