ただ樹のように

ひとつ歩くたび
先のとがった言葉たちが
裸足のあなたを
いくつもいくつも傷つける

けれどあまりに小さいから
あなたはそれに気づかない
気づいたときにはもうすでに
あなたの足は夕日の朱よりもなお紅くなっていて

足下の大地はこんなにもあたたかく
赤子の髪のような緑であふれているのに

どうしてだろう

分かり合うためにあるはずの言葉だけが
あなたを絶えることなく傷つける

守るべき役目を与えたつもりの私の腕は
立ちつくしてしまった今のあなたの前では

あまりにも無力

伝えることでも
触れることでも
癒すことはできないから

あなたの横に
ただ立っていよう
何をするでもなく
ただ立っていよう

あなたを笑顔で見送る
その時がおとずれるまで

ただ立っていよう


そばにいるという大切さ。
支えるでもなく、手を差し伸べるわけでもなく
ただそばにいるというやさしさ……