「ノクターン」


胸いっぱいに吸い込んだ風が
乳白色のため息になって夜空にとける

思い出そうとしていたきみの顔が
ふいにかすみかけたから
僕はつかむことなんてできるはずもない星に
必死になって手を伸ばしたんだ

そして気付く
色あせることのない思い出なんてないということに

ふとして気付く
涙が涸れ果てることなんてないということに

いまさらになって気付く
きみをこんなにも愛していたということに

さようなら きみよ
願わくば

あの一番の笑顔が
たとえ僕でないほかの誰かのためだとしても
いつまでも消えることのないように

穏やかな気持ちで
僕は祈る


それは強がっているわけではなく
そうすることで次に進むことができる……
そんな僕の身勝手なのかもしれない