音もなく 色もなく

 

景色が色をなくしたのは
一面の雪化粧のせいなのか
それとも僕の心のせいなのか

自らの周りを自閉という柵で囲い
「なんてつまらない世の中だ」
なんてがなりたてる……
けれどその声も色と同じように
無色の壁に吸い込まれて音をなくしていく

目の前にあるモノを虚像だといい
耳に聞こえるモノを虚飾だという

そんな強がりは馬鹿げたことだと
とうの昔に気づいている
どんなに頑丈に作った柵も
なんてことはない
隙間だらけなのだから……

いずれ陽が巡り
足下に緑が訪れたならば
少しは素直に
顔を上げ
耳を澄ます
そんなあたりまえのことが
ようやくできるのかもしれない

「なにひとつない」と叫んでいるときほど
「なにかを求めている」ものだから

 


今はまだそれはできないかもしれないけれど
いつか前をむくことができますように……