流浪
郷愁を誘う言祝ぎの唄が
爪弾く月の音色に舞い踊る
万緑をもとめる旅を始めて幾年月
幼きをつなぐ糸はとうにかすれ
すり減らした靴底には
行く先々で見やった人々の
ぬくもりに満ちた営みが染みこんで
遙か先を悠然と泳ぐ白い鳥
おまえには明日が見えているのだろうか
物言わぬを憂うことはないけれど
ただ
この先に道が続いていると
それをどうか信じさせていて
鼻先を一陣の風がかすめる
新たな出逢いを胸の奥に予感させながら……
通り過ぎる誰かの日常に思いを馳せて
今日もまた明日を目指して歩く