坂の途中
冬を忘れようとして
必死に坂を駆けのぼった
身体中を熱で覆ってしまえば
淋しさで震えることもない
すべてを無くしてしまえる
そんな
出来の悪い幻想に逃げ込んでいるだけだと知りながら
いつしか息が切れて
靴ずれた足は歩くこともままならず
アスファルトに腰をおろした僕は
顔を上げて空を吸い込んだ
逃げ続けることなんてできない
わかってはいた
でも気づいてはいなかった
それは
絶望ではなく希望なのだということに
坂の下を見おろすと
小さくなった誰かが
やさしくやさしく笑っていた
果てがないということは
自分を立て直せるチャンスがあるということ