誕生日

遠くほうから風にのり
泣き方を忘れた者たちへと
過去をとかした潮騒がささやきかける


それは責めるでも問いかけるでもなく
ただ「ほがらかであれ」と繰り返すから
頬にはりついた髪はいつの間にか乾いていて
まっすぐな眼差しを僕は取り戻していたんだ


なびいた前髪の向こうから
ずいぶんと久しぶりに太陽が顔を覗かせ
そして僕はようやく

世界はこんなにもあったかいのだと思い出した

胸はやさしさで満ちあふれ
涙はまだ流れなかったけれど
かわりにほんの少し

ため息がもれた


目を向ければ気づけることがこの世界にはたくさんあって
それを知ることはきっとあなたにとって大切なことだと思うから……