ときには名も無き歌を


「後悔」って言葉を辞書で引きすぎて
そのページだけすり切れてしまったよ
しかたないから僕はその部分だけちぎって
風にのせて飛ばしたのさ

夏が遠くから呼びかける
水平線の区別がつかないくらいに
視界いっぱいの海と空
太陽はどこからどこへといくのだろう
ふいにわからなくなって砂浜に寝転がった

限りある僕らは
限りないそれらに憧れ
終着駅を地図に描き込み忘れてしまった
気づいた頃にはもう
心の中は空っぽになってるね

この両手をどれだけ伸ばしても
世界の広さには遠くおよばない

だから僕らは歌をうたう

ときに勇気を
ときに友情を
ときに悲しみを
ときに喜びを
そしてときには愛の歌を

「後悔」を記した紙が視界から消えるころ
僕は口ずさむ

いまはまだテーマのないその歌を


息抜きをして生き抜いて
もどらない過去ならば、精一杯に現在(いま)を……